建設業における気候変動影響の概要

建設業においては、平均気温の上昇、極端な降水の発生頻度や強度の増加、強い台風の増加、それらに伴う河川の洪水や内水氾濫、土砂災害の発生頻度の増加がみられ、建築物やインフラへの影響が生じています。将来、気候変動が進行すれば、さらに影響の程度・発生頻度は増加すると考えられます。

また、熱中症の救急搬送者数の増加傾向が確認されており、過去5年間の職場における熱中症による死亡者数、死傷者数は、ともに建設業が最大となっています(出典:厚生労働省、2020)。今世紀末には、東京・大阪で日中に屋外労働可能な時間が現在よりも 3040%短縮することが予測されています。

気候変動影響についての詳細

急性の影響として、極端な降水の発生頻度や強度の増加、強い台風の増加、それらに伴う河川の洪水や内水氾濫、土砂災害の発生頻度の増加がみられ、工事現場等の被災、建築物・インフラ等の損傷、サプライチェーンの分断、資機材調達への支障が生じ、第三者被害を与えるリスクの増加が起きています。また、平均気温の上昇等により、労働環境の悪化や熱中症の増加が生じています。

慢性の影響として、平均気温の上昇等により空調負荷の増大が生じ、極端な降水の発生頻度の増加により工事現場運営が困難な日数が増加し、建築物・インフラの性能劣化が生じています。

一方で、気候変動が進行することによる機会が生じていることも指摘されています。防災、減災工事、維持管理復旧工事、メンテナンス・リニューアル工事の需要拡大が見込まれます。また、降水量の減少による水環境施設の需要増加が考えられます。

影響一覧

影響 分野
水災害 暑熱
起こり得る影響 リスク 急性 ・工事現場等の被災

・建築物、インフラ等の損傷

・サプライチェーンの分断、資機材調達への支障

・第三者被害を与えるリスクの増加

 

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・労働環境の悪化(それに伴う技能労働者不足の深刻化)

・熱中症の増加

 

 

 

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慢性 ・工事現場運営が困難な日数の増加

・建築物、インフラの性能劣化

 

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・工事現場運営が困難な日数の増加

・建築物、インフラの性能劣化

・空調負荷の増大

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機会 ・気候レジリエンス・環境性能の高い建物、インフラへのニーズの高まり

・防災、減災工事、維持管理復旧工事需要の拡大

・防災、減災工事費、メンテナンス、リニューアル工事費の増加

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・気候レジリエンス・環境性能の高い建物、インフラへのニーズの高まり

・労働環境の悪化への対策ニーズの高まり

 

 

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【種類・用途・時点】(種類:ツール、マニュアルや参考情報等、事例集、用途:現在の影響の把握、将来の影響の想定、適応策の検討、適応ビジネスの検討)

水災害

急性リスク

ハザードマップポータルサイト

【ツール・現在の影響の把握】

災害リスク情報や防災に役立つ情報を、全国どこでも重ねて閲覧できるWeb地図サイトです。洪水・内水氾濫、土砂災害、高潮等の災害種別でハザードマップを選択することができます。
あなたの街の防災情報

【ツール・現在の影響の把握】

市区町村を指定することで、対象地域の発表中の防災情報、台風情報、雨雲の動きなど、現在またはこの先の災害発生についての情報を得ることができます。
WebGIS(自然災害分野)

【ツール・将来の影響の想定】

水災害に関する将来予測をWebGIS上で確認することができます。年期待被害額、年期待最大浸水深、年期待暴露人口、斜面崩壊発生率、砂浜消失、砂浜消失率についてのデータが掲載されています。
できることから始める「気候変動×防災」実践マニュアル -地域における気候変動リスクを踏まえた防災・減災対策のために-

【マニュアルや参考情報等・適応策の検討】

環境省は内閣府とともに、気候変動対策と防災・減災対策を効果的に連携して取り組む戦略として、『気候危機時代の「気候変動×防災」(小泉環境大臣・武田内閣府特命担当大臣共同メッセージ)』を公表しました。本マニュアルは、「気候変動×防災」を全国的な取組とすべく、主に自治体のみなさま向けに作成したものです。先進事例を参考に、基本的な考え方や取組を進めるうえでのポイントを整理しています。
治水経済調査マニュアル(案)

【マニュアルや参考情報等・適応策の検討】

治水経済調査は治水事業のうち、経済的に評価できるものについてその便益を把握するとともに、費用および施設の維持・管理に要する費用を算定し、両者を比較することで経済性を評価することを目的としています。 本マニュアル(案)は、このための標準的な調査方法を定めたものです。
適応策の事例

【事例集・適応策の検討】

事業活動における気候変動から受ける影響を低減させる取組事例を紹介しています。取組の内容としては、気候変動による影響・気候リスクの評価、気候変動の影響に対する施策、気候変動から生じるリスクの管理、等があります。
事業継続ガイドライン

【マニュアルや参考情報等・適応策の検討】

事業継続計画(BCP)を含めた事業継続マネジメント(BCM)の概要、必要性、有効性、実施方法、策定方法、留意事項等についての情報を提供しています。BCP策定時の参考とすることができます。
タイムライン

【マニュアルや参考情報等・適応策の検討】

タイムラインとは、災害の発生を前提に、防災関係機関が連携して災害時に発生する状況を予め想定し共有した上で、「いつ」、「誰が」、「何をするか」に着目して、防災行動とその実施主体を時系列で整理した計画です。タイムラインを作るための関連情報が提供されています。
浸水被害防止に向けた取組事例集

【事例集・適応策の検討】

過去の大規模水害が社会経済に与えた影響や企業等における先行的な取組事例等について、情報がまとめられています。
高潮防災のために

【マニュアルや参考情報等・適応策の検討】

沿岸域に生じる高潮への防災のために、発生メカニズムや対策についての情報が提供されています。
水災害

慢性リスク

工期設定支援システム

【ツール・適応策の検討】

工期設定に際し、標準的な作業日数や作業手順を自動で算出するシステムです。降雨・降雪日を考慮した工期設定を行うことができます。
水災害

機会

総力戦で挑む防災・減災プロジェクト~いのちとくらしをまもる防災減災~

【マニュアルや参考情報等・適応策の検討】

気候変動の影響により、激甚化・頻発化する自然災害等から国民の命と暮らしを守るため、国土交通省は「総力戦で挑む防災・減災プロジェクト」として施策をとりまとめています。特に充実・強化すべき施策などが示されています。
適応ビジネスの事例

【マニュアルや参考情報等・適応策の検討】

 

気候変動への適応を自社のビジネス機会として捉え、他者の適応を促進する製品やサービスを展開している取組事例を紹介しています。

自然災害・沿岸域分野の事例をご覧ください。

暑熱

急性リスク

熱中症予防情報サイト

【ツール・現在の影響の把握】

全国における熱中症警戒アラートや暑さ指数の状況を提供しています。建設工事実施可否の判断に参考とすることができます。
熱中症関連情報

【マニュアルや参考情報等・現在の影響の把握及び適応策の検討】

熱中症に関連する様々な情報を集約し、国や自治体から提供している情報や熱中症の予防・取組みに関する適応策、また暑熱健康に関する研究動向についても掲載しています。
WebGIS(健康分野)

【ツール・将来の影響の把握】

暑熱に関する将来予測をWebGIS上で確認することができます。熱中症搬送者数、熱ストレス超過死亡者数についてのデータが掲載されています。
職場における熱中症予防情報

【マニュアルや参考情報等・適応策の検討】

働く人の今すぐ使える熱中症ガイドや自分でできる熱中症予防「自分でできる7つのこと」についての動画などを提供しています。
働く人の今すぐ使える熱中症ガイド

【マニュアルや参考情報等・適応策の検討】

熱中症になった人への対処方法や予防方法、取組例などの情報を提供しています。2章では「建設現場(屋外)編」において、建設現場の危険性について具体例を示して説明しています。
熱中症環境保健マニュアル

【マニュアルや参考情報等・適応策の検討】

熱中症のメカニズム、対処方法や予防方法、保健指導などについての情報を提供しています。
適応策の事例

【事例集・適応策の検討】

事業活動における気候変動から受ける影響を低減させる取組事例を紹介しています。取組の内容としては、気候変動による影響・気候リスクの評価、気候変動の影響に対する施策、気候変動から生じるリスクの管理、等があります。
暑熱

慢性リスク

工期設定支援システム

【ツール・適応策の検討】

工期設定に際し、標準的な作業日数や作業手順を自動で算出するシステムです。降雨・降雪日とともに、猛暑日も考慮した工期設定を行うことができます。
暑熱

機会

適応ビジネスの事例

【マニュアルや参考情報等・適応策の検討】

 

気候変動への適応を自社のビジネス機会として捉え、他者の適応を促進する製品やサービスを展開している取組事例を紹介しています。

健康分野の事例をご覧ください。

参考文献

  • 気候変動影響評価報告書